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消費税が10%になる前に知っておきたい周辺知識

改正消費税~10%になる前に知っておきたい事~

10%になる前に知っておきたい周辺知識

H31.3,4月FACEBOOK投稿分より

いよいよ平成31(2019)101日に改正消費税が施行されます。

「安倍首相は再び回避するのでは?」との予想も一部ではありますが、行政面では最早引き返せないところまで来ており、税率アップは免れないでしょう。

税率アップも気になりますが、そもそも消費税ってなんでしょう?この機会に周辺知識も含めて消費税について知って、その上でいろいろ考えてみませんか?

最初は改正には関係がない周辺知識から。それでは始めましょう!

世界の消費税

日本で消費税法が成立したのは1988(昭和63)、施行は翌年(平成元年)4月1日ですが、消費税の元となった消費税、売上税、付加価値税などは昔から世界中に存在しました。
例えば、アメリカでは1862年の物品税に始まる売上税等が実施されています。これについては、連邦国家であるアメリカらしく各州で税率が違い、州を跨いだ際の税率差の調整など、日本の消費税と大きく違います。また、EC(ヨーロッパ共同体)でも、1957年に各国の売上税を整理することを決議し、10年掛けて付加価値税に移行させた歴史を持ちます。
このように、世の中に存在する物、流通する資材やサービスに対し広く薄く課税しようという考え方や租税は世界中に存在し、成立からたった30年しか経っていない我が国の消費税は先進国中で最も後発の部類、と言うことが言えるでしょう。

ここでは詳細は書きませんが、連邦国家等の国家の成り立ち、地域共同体その他課税主体等の違いにより、租税に対する考え方、税法の記述形式、課税対象や課税標準額等に様々な違いがある事が判ります。当然ながら、国家予算は主として税金で成り立っています。世界の租税制度は為政者の考え方を反映している事、本当に興味深いと思います。

また、余り知られていないことですが、1948年(昭和23年)9月から翌年12月まで、我が国で実施された取引高税も消費税の一種類と言えます。シャウプ税制勧告により不公平税制として廃止されたようですが、今のところ詳細が分かりません。戦争直後の租税制度については終戦処理とセットで語られることも多く、謎が多いですね。

消費税の前身

■税率5%の売上税

消費税が導入される前、1987(昭和62)に中曽根内閣によって国会提出され、可決される寸前まで行った税金です。仕組みは消費税とよく似ていますが、その名の通り消費に掛ける税金としてでは無く、事業者の売上に掛かる税として発案されたものです。

当時は自民党が過半数を占めていたため、与党税制調査会で議決されたタイミングで「もう導入は決まり」と、様々な売上税に関する書籍が出版され、各商工会や税理士会等で研修が開催されたようです。

余談ですが、売上税が廃案になったのは私が税務会計の業界に入った頃の事で、売上税関連書籍が事務所の本棚にずらっと並べられているのを見て、「こんなに沢山本を読まないといけないのか?!」と先行きに不安を覚えた記憶が鮮明に残っています。我々の業界は「勉強が仕入」、その不安感は見事に的中しました()

日本における消費税の歴史

税率5%の売上税に取って代わる形で制定された消費税は、現在まで下記の様な変遷を辿っています。

竹下
198812月 消費税法成立。
19894月 3%の税率で施行。同年6月に辞任。

細川護煕
19942月 消費税に代えて税率7%の国民福祉税の構想を発表し、内外の反対に遭って翌日撤回。

村山富市
199411月 消費税率を3%から5%に引き上げる税制改革関連法成立。
うち1%の地方消費税はこのときに創設。

橋本龍太郎
19974月 消費税率を5%に引き上げ実施。翌年の選挙で惨敗。

鳩山由紀夫
20099月 「消費税率は4年間上げない」とするマニフェストで民主党勝利。

菅直人
20106月 参院選直前に「消費税10%」を打ち出し、選挙に惨敗。

野田佳彦
20128月 税率を2014年に8%、15年に10%に引き上げる法案を可決成立。12月に内閣総辞職。

安倍晋三
20144月 消費税率を予定医通り8%に引き上げ。
201411月 201510月の税率10%への引き上げを1年半延期。
20166月 税率引き上げを再び2年半延期。
201810月 201910月に税率10%に引き上げる方針を表明。同時に軽減税率導入(8%)

以上の流れを見ると、消費税が選挙に与える影響の大きさが判ります。

興味深いのは、全ての消費税率アップが連立政権で決議され、その後の政権交代の後に税率アップに携わった自民政権が選挙で倒れる、と言う流れを繰り返してきたことでしょうか。

現在の安倍政権が税率アップ後も持ちこたえているのは政権の支持率が高かったことだけで無く、5%から8%に税率を上げたあと、その後の10%への税率アップ延期を早々に表明をしたことが効いたと思われます。
さて、今年10月に予定されている税率アップに伴う軽減税率の導入などの工夫は、さて民意にどう響くでしょう!?          

改正の内容と施行時期

税法を学ぶ際には、政策的な意図や目的、税法の詳細など、成り立ちの部分から理解しておく事が後々の深い理解や対策を立てる際などに役立ちます。
今回は改正の内容と施行時期について、大まかに書き進んでみます。

なお、印は私見または推論です。

法律上、税の行政上の取扱については法律で元号によるものされていますが、比較理解を容易にするため、本コラムでは西暦を基本に書いて参ります。

1)改正時期
201910月1日
諸説有るが、これは決まりだと思います。 

2)税率の改正
8→10%に税率アップ、併せて軽減税率(8%)導入。
軽減税率導入で大混乱の可能性。税率を間違えると大変なことに!

3)控除要件の改正
請求書等保存方式から区分記載請求書等保存方式へ
また、2023年から適格請求書等保存方式に改正されます。
事業主は適格請求書等を発行する必要が有ります。

4)税額計算方式
売上税額計算は割戻計算、仕入税額は積上計算が原則に。

5)免税事業者からの仕入に掛る税額控除
2023年までは全額控除、以後段階的に減少し、2029年から控除無し。
免税事業者は、現在の益税から損税に推移。

6)簡易課税の届出特例
一定時期に係る提出時期特例が設けられます。
届出時期を間違えると大損する可能性有り。

7)税計算の宥恕 (ゆうじょ)
売上税額は最長4年間、仕入税額は2~3年程度、みなし計算が可能。

消費税 基礎知識

軽減税率の詳しい説明に入る前に、知っているようで案外知らない基礎知識を挟んでおきますね。

 今の消費税の税率は8%ではありません!?

世間で一般的に消費税と言うと8%なのですが、実は一般的に言う消費税は二つの税金が合わさった税金で、内容は、国の税金である「消費税(6.3%)」と地方の税金である「地方消費税(1.7%)」となっています。

これは、消費税率が3%から5%に上がった際に、それまで全て国の税金だった消費税のうち4%を国の税金として、その他1%を地方の税金として定めたことに端を発しています。最初5%に定められたときの地方消費税は、国税たる消費税の25(消費税全体の20)だったのですが、8%に上がった際に地方消費税の割合が微妙に増えました。

この辺りは、災害復興その他に際して地方自治を尊重し、国の財源を地方に移譲して行こうという流れの中で定まった事で、控除納税者が自分の意志で、災害を受けた地区など、自分の住所地以外の自治体を応援出来るように、所得税(国の税金です)控除と組み合わせ、他の地方に財源を移譲できる様に考案された「ふるさと納税制度」と発想が似ています。

ただし、ふるさと納税制度では、各自治体による「お礼合戦」が白熱した結果、全国レベルでの実質税収が減少した事を反省してか、消費税改正に伴うショックアブソーバとなる政策における「ばらまき」(個人的な感想です)は国がコントロールする方向で調整が進んでいるようです。その辺りの詳細は今後書いて行くことにします。

 軽減税率の8%と今までの8%とは中身が違う

今の消費税率の8%は、前述の通り、国税が6.3%、地方税が1.7%で構成されています。これが改正消費税になると10%のうち国税が7.8%、地方税が2.2%になり、更に地方税の割合が高くなっているのが判ります。
軽減税率の方を見ると、国税が6.24%、地方税が1.76%と、国税対地方税の割合が地方税側にシフトしているのが判ります。

<国税対地方税の割合の変遷>
 税率3%時代  100 : 0
 税率5%時代   80 : 20
 税率8%時代  78.75 : 21.25
 税率10%時代  78: 22

この辺りを解説しているウェブや書籍は目にしたことが無いので、きっと世間的には「そんなこと、どうでも良い」方が多いのかもしれません。ただ、こう言った伏流水の如く目に見えにくい「流れ」を知っておいて損は無いと、私はそう思っています。

この頁は当事務所のFACEBOOKで投稿された消費税の改正に関することをまとめたページです。 藤戸綜合事務所のFACEBOOKはコチラ

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