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前の頁 遺言書のルールが変わります。
自筆遺言のルール変更、配偶者優遇他
R1.6月FACEBOOK投稿分より
次に相続執行者に関する改正民法に関しての説明です。の前に、
<テレビドラマなどで見る相続執行者のイメージ>
~あくまでも藤戸個人のイメージです~
ある日、とある富豪家庭に、亡くなったお爺さんの代理を名乗る遺言執行者(何故か若い弁護士)が現れ、御老公の印籠の如く遺言を示し、しかもそれは自署遺言なのに裁判所の検認手続きも無く封が切ってある(法律上無効)もので、相続人達に遺言の内容は教えないわ、被相続人の意志と言いながら勝手な振る舞い三昧(執行者は今のところ相続人の見なし代理人ですが)。挙げ句の果てに、嫡出子である相続人には全く相続させず(民法違反)、故人と会ったことも無いような若い非嫡出子に遺留分を考慮せず全財産(真偽不明)を分配しようとする、傍若無人な奴。
これは全っっ然!違います。こんな奴居ませんし、もし居たら詐欺師です。と言うか、信じている人などいませんね(汗)
さて、本題に入りましょう。
遺言執行者関連の改正事項(2019年7月1日施行)
私は実務上、遺言作成をお手伝いすることが多く、その殆どの遺言書上で「遺言執行者」として指名を頂いています。
ただし、私の手がける相続案件においては、特に円満な場合の相続手続きは我々の事務所で方法をお教えしながら御遺族自身で行われることをお勧めしており、これまで殆ど遺言執行報酬は頂いたことがありません。(もちろん相続税の申告が必要な場合の申告料はいただきます。)相続手続きは手間は掛かるが遺言通りに手続きするだけの簡単な業務で、税理士に高額な執行料を支払って依頼するのはもったいないと思うからです。勿論、それでも実際に執行を依頼されたら喜んでお引き受けしますが。
今回の民法改正では、その遺言執行者についての改正がいくつかありました。前回と同様に、改正民法条文に私の解説文(※)を所々に入れておきます。
(民法第1007条・遺言執行者の任務の開始)
1 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
※ 改正民法では、第二項が追加になりました。この辺りは明文化されず各人の「常識」で運用されていたものですが、執行者によっては相続人に黙って黙々と遺言内容に沿って手続きをする場合なども有ったのかもしれません。
(民法第1012条・遺言執行者の権利義務)
1.遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
※ 「遺言の内容を実現するため」の部分が追加されました。執行者が就職した目的を改めて明文化したことで、個人的には「勝手なことをするなよ感」が鮮明になった気がします(笑)
2.遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
※ これも改正です。遺贈の執行を他の相続人に任せることは恣意的に遺言内容が改変される恐れがある、と言うところでしょうか?執行者にとっては有り難い改正かと思います。
3.第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。
※ ここは条文項目が二項から三項にずれただけで内容の改正はありません。
(民法第1015条・遺言執行者の行為の効果)
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。
※ これは新しい条文で、下記の旧法からの改正です。旧法では執行者は「相続人の代理人」とされており、多分遺言を作成された故人がお持ちだったであろう「遺言執行者は被相続人の代理人」や「亡くなった方の意志を引き継いで実行する者」と言うイメージとは少々ずれたものでした。
この改正で、やっと本来の執行者の業務がやりやすくなったと言えるでしょう。
参考
(旧民法第1015条・遺言執行者の地位)
遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
※ 以上が旧法条文です。前の解説と被りますが、「遺言執行者は遺言を遺した被相続人の遺志を実現するのが責務の筈なのに相続人の代理人とは此如何に?」と、予てから疑問に思ってきたことがやっと解消された、という感じです。
遺言執行者についてまとめ
今回まで三回に渡って遺言執行者についての説明をしてきました。ごくごく簡単に書き進んだつもりでしたが、このペースで書いて行くと改正民法の入門書サイズになってしまう事が判りましたので、この回でこの部分に関しては終了しておきます。
ただ、令和元年7月1日以前に作成された遺言書と、同年7月2日以降に作成された遺言書では、そこに書かれた文章が一言一句同じであったとしても、遺言執行者に与えられる権限は全く違う、と言うことだけは憶えていて頂きたいと思います。
今回の改正では、特に遺言執行者に関して多くの改正や条文作成が行われ、その全てを把握できている方は、今のところ、例え専門家であっても圧倒的多数では無いと思われます。何より、7月1日までに遺言書を作成しても改正民法の適用対象外だという事を知らず作成されそうになった遺言の事例を私自身が見たことが、このコラムを書くきっかけになったのですから。
遺言執行者関連の改正事項(2019年7月1日施行) その2
(民法第1016条・遺言執行者の復任権)
1 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
※ この辺りは遺言執行者にとって有り難く、また重要な改正で、改正前は遺言者が遺言上において別段の意志を表示しない限り出来なかった「復任権」が遺言執行者に認められました。「復任権」とは、遺言執行者の任務が広範になる場合や、格別の法律知識が必要となる場合などに、遺言執行者自身の責任により第三者に任務を負わせることが出来るようになったものです。自分が執行するのが難しい相続手続き部分を、自分の責任で第三者に執行を任ずることが出来ると言うことを明文化してくれたおかげで、いちいち相続人全員の委任状を取り直すなどの手間が省けるようになると思われます。
2 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
※ 判りやすく言うと、「執行者には無理な業務」(これが「やむを得ない事由」になります)は、遺言執行者自身が「Aさんに頼もう」と決められる(復任権)。しかし、そのAさんの仕事に齟齬があった場合は、「業務に関する責任はAさんが問われる」、遺言執行者には「Aさんを選んだ責任」と「Aさんを監督しなかった責任」だけが問われる、と言うことです。これまで、例えば税理士から弁護士に一部相続手続き業務を外注したところ民法条文を盾に相続案件ごと乗っ取られ、結果数倍以上の高額報酬を請求されたなどというひどい事例を耳にすることも有りましたが、今後は、それこそ弁護士、税理士、司法書士等で無くても、「法律知識は浅くても被相続人が信頼する者」に遺言執行者を依頼しやすくなったと思います。
7月1日以前に開始した相続であっても7月2日以降は自動的に適用可能とされる事項の紹介です。今回は条文解説ではなく要旨の紹介に留めておきますね。
<預貯金の仮払制度>
(改正前)「相続された預貯金は、遺産分割が終了するまでの間、相続人全員の同意がない限り、相続人単独での払い戻しは出来ない」とされました。
(改正後)「相続された預貯金は、相続人全員の同意がなくても、遺産分割協議前に払戻し可能」となりました。
※ 引き出せる金額に最高150万円(平均的な葬儀費用として法務省の定める金額だそうです)の上限その他計算規定が設けられているなどの制限は有りますが、「財産の分配がされないと葬儀代も出せない!」と言うような恐れは減ったのでは無いでしょうか?
<債権の承継の通知>
相続により債権を承継する場合、法定相続分を超えて債権を承継した共同相続人が、その債権に係る遺言の内容を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなすことで、債権を承継した受益相続人が単独で通知による対抗要件を具備できるように手当がなされました。
※ 多めに債権を引き継いだ相続人が、そのことを、債務者に対して、相続人を代表して伝えれば、他の全員にも同様の権利が宿る、と考えて頂ければ良いと思います。これは今回の改正全般を通じて「使いやすさ」に注力している例に漏れず、債権者保護規定として大変有効だと思います。
駆け足で紹介して参りました、改正民法の相続編ですが、ここまでの改正はいよいよ明日!の7月1日に施行され、7月2日以降に有効となるものが殆どです。前後で随分と取り扱いが変わりますし、改正民法の方が使い勝手も良いため、遺言その他の作成時期には十分注意して頂きたいと思います。
次に施行される改正民法は2020年4月1日、施行直前にまた記事を載せますので、改正民法相続編の簡単な紹介は、この辺で。
2019年6月30日 所長 藤戸
この頁は当事務所のFACEBOOKで投稿された消費税の改正に関することをまとめたページです。 藤戸綜合事務所のFACEBOOKはコチラ
本文中では平易に書くことを目的としておりますので、各種特例等を考慮に入れていない場合がございます。
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