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H30.2月FACEBOOK投稿分より
本文中では平易に書くことを目的としておりますので、各種特例等を考慮に入れていない場合がございます。
また、分かりやすくご説明するため、簡易な用語の使い方・表現の仕方をしております。
個別の事案については税理士にご相談ください。
会社のお金が外部犯による盗難に合った場合は、警察に盗難届を出しますよね。被害額を証明できる公的な手続きを踏んでいれば、会社の損失金として計上できますが、では社内の人間によって横領されたら、どうなるでしょう?業務上横領をされた会社側の処理を税務の切り口から書いてみます。
すぐに損金計上はできません!
横領と一口に言っても、現金の持ち逃げに始まり、客先から回収して来た代金を、売上として帳簿に記帳せずそのまま懐に入れてしまうケースや、架空の請求書や領収書を作って経費を支払ったかに見せて着服するケース等々、手口は色々あります。
さて、この「業務上横領」。法人税基本通達に「他の者」によって被った損失はその期の損失に計上できるという規定がありますが、役員や従業員は“会社の者”であり「他の者」ではありませんので、横領された段階ではすぐに損失金計上は出来ない、と思って下さい。会社にも管理責任の一旦がある、ということです。
損失を損金計上するためには
横領が発覚した時点では、まだ返してもらえないと決まったわけではなく、会社には、横領犯に対する損害賠償請求権という「債権」が残ります。
そのため速やかに損金経理することは出来ないというのが現時点での一般的な考え方です。その後、横領者に支払能力がなく損害金が回収不能であることが証明できてはじめて、「貸倒損失」として損金計上することができますが、そのための要件は厳しく簡単には認められません。
返済不能と確定しないうちに、会社が諦めて債権放棄した場合は、お小遣い(盗人に追い銭)をあげたようなものですから、横領犯である役員や従業員に対する賞与として処理しなければなりません。なお、従業員賞与は損金計上できますが、役員賞与は税務上、損金算入出来ません。
追い銭にも源泉所得税?!
さらに賞与と見なされた場合、賞与に対する所得税が課税されますが、源泉所得税の徴収、納付義務は会社側にあるため、まずは会社が代わって納税しなければなりません。立替えた源泉税分を、本人から回収するのが難しいからといって会社が負担すると、その源泉税負担分も従業員(役員)への賞与扱いとなり、そこにまた源泉税が・・・(エンドレス)
さらに、源泉税の納付が遅れたことに対して、不納付加算税や延滞税も!!
あぁぁ(;o;)
お役立ち情報一覧
横領された上に罰則?!
単なる現金抜き取りの場合は、横領者に対する債権(貸付)が出来ただけ、と考えることも出来ますが、売上高を隠して売上代金をくすねていた場合や、架空経費を計上して金銭を抜き取っていた場合は、(よほど巧妙な手口で、会社側が見抜くのが不可能であったと認められない限り)国税当局からは、会社ぐるみで売上隠しや経費過大計上を行っていたとみなされることもあります。
過少申告(いわゆる脱税)していたことになりますから、法人税追徴、消費税追徴だけでなく、延滞税は勿論、税務調査で指摘された場合には過少申告加算税、場合によっては仮装隠蔽に対して重加算税(!)まで課される可能性もあります。
たとえ、経営者の知らないところで従業員等が行った不正であっても、会社責任は免れない・・・というのが国税当局の見解のようです。
表沙汰にしたくないため、警察に届けず、役員や従業員に対する貸付金として処理し、少しずつ返済させるケースを時々見受けますが、過少申告に該当するケースでは、下手をすると会社ぐるみで脱税隠しをしていることになりかねません。そんなところに税務調査が入って、ことが発覚すると、重加算税だけでは済まなくなり、社長が逮捕(!)という可能性もあり得ない話ではありません!
うやむやに処理しようとすれば、会社で損失を経費計上することが難しいだけでなく、犯罪に荷担しているとみなされてしまうこともありうるということです。
業務上横領は、実は社長から信頼されていて頼れる役員や従業員が起こすことが多いのです。
社長は信頼しすぎて、金銭や帳簿の管理を一人の従業員に任せきりにし、帳簿なんか見たこともないし、帳簿残と現金実在高が合っているかを確認したこともない、という実態が散見されます。
「小人閑居して不善を為す」と申します。人間、放っておくと誰しも、ろくなことはしないのです。だって、誰も見てないんだもの。
「貧すれば鈍する」とも申します。人間、お金に困れば、本当に何でもします。
また、たかだか、日々の経費精算のための小口現金の管理だけを任せても、多くの従業員は現金を持たされると、自分が何かの権限を与えられたかのように勘違いします。気が大きくなる、というやつです。
はじめは、会社のお金を寸借してすぐ返す、という行為を繰り返していても、やがて返せないほどの額に膨らんでいき、気がついたら何百万、何千万、というのもよくあるケースです。
なるべく、金銭や経理に係る業務は複数の従業員に任せる、持ち回りにする、人手が足りないのであれば経営者が定期的に現預金の確認や帳簿に目を通す、等のこまめな手間をかけましょう。
逆に、金銭が紛失したときに従業員にあらぬ疑いをかけなくてすむように、従業員の精神的負担も軽くしてあげましょう。
信頼するためにこそ、悪事を働こうと思っても出来ない環境を作っておくことが肝要です。
うちの会社では横領なんかないよ、と思っている社長さん。金銭の着服だけが横領ではありません。会社の商品や、切手、事務用品などを、従業員が無断で家に持ち帰ったり、私用に使っていませんか?これらも立派な横領です。
また、経路を偽ることによる通勤交通費や業務交通費の水増し請求は、横領の始まりです。
まずは不正を行えないような社内環境を作ることが肝要と言えます。管理責任も経営責任です。
今回は、横領を抑止するための対策です。
毎日の現金残高をきちんと合わせる
毎日の現金をきちんと合わせるのは、経理及び経営の基本です。
いわゆる「現金商売」では、毎日の売上金をレジの数字とぴったり合わせるのは基本中の基本です。釣り銭の渡し間違い等による過不足は現金商売にはつきものですが、それが日常化していて、合わなくて当然のような空気ができあがっていては、不正の温床になりかねません。1円を笑うものは1円に泣くのです。
残高が合わない時には、犯人捜しや責任追及に走るのではなく、「原因究明」をし、同じ間違いを起こさないためにはどういう仕組みを作ればいいかを考えましょう。
もちろんそのお手伝いは当事務所でも致します(宣伝)
棚卸をこまめに行う
これは、小規模の事業所ではなかなか実務上難しいと思いますが、商品や消耗品の棚卸を、年に1回ではなくもう少しこまめに行うことも、物品横領の抑止にはなります。
帳簿上の数字(購入数-売れた数=残数)と、実際の残数が合致するかどうかを合わせてみることも必要です。合わない=横領、というわけではありませんが、商品をサンプル代わりに無償で配っていたり、割引代わりに只で取引先に差し上げていたり、ということが常態化していることもありえます。
また、売れない商品を必要以上に仕入れて、不良在庫になっていないか等を把握する為にも、こまめな棚卸は有用です。
警察に届ける
それでも横領が起きてしまったら、明らかに内部犯による盗難とわかっていても、表沙汰にしたくない等と言わず、警察を呼びましょう。
犯人が見つからなくても、警察沙汰にしているのだと見せつけることで抑止力としては充分効果があります。また、警察に届けるということは外部犯行を疑っているのだと、カモフラージュすることもできます。実際に、警察沙汰にして以降、ぱったり盗難がなくなったという例もあります。
信頼しているスタッフが悪事を働いていることを認めたくないという気持ちもわかりますが、どこかで歯止めを掛けてあげないと、黙認していることで制御が効かなくなり、さらに多額の横領に発展した場合、スタッフ自身の今後の人生をつぶすことになります。
お金の管理と、人の管理が、経営の基本ですね。