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R4.7,8月FACEBOOK投稿分より
現在免税事業者である事業者の適格請求書発行事業者登録について確認します。
免税事業者が登録するには?
免税事業者は適格請求書発行事業者の登録が出来ない、と前回書いた通り、免税事業者が登録を受けようとする場合には課税事業者を併せて選択する必要があります。
しかし!スムースにインボイス制度の導入が出来るよう、下記の通り期間を決めて例外規定(経過措置)が設けられています。
課税事業者選択に関する経過措置
前項で「選択する必要があります」と書いたのですが、令和3年10月1日から令和5年3月31日までの期間に登録申請書を提出した場合には自動的に令和5年10月1日から課税事業者となることを選択した、と見なされます。
※これは「届出書類の提出を免除して貰える」便利な一面もありますが「強制的に選択させられる」と言う意味合いも強い経過措置と言えるでしょう。繰り返しますが、「インボイス発行事業者登録をしたら免税事業者のままで居ることは出来ない」、ここ要注意です。
課税事業者選択の効力
前項により、又は『課税事業者選択届出』を提出して課税事業者となった事業者は、課税事業者となった日から2年を経過する日の属する課税期間までは消費税を申告納税する必要があります。
言い換えると、「インボイスを発行出来る方が免税事業者のままより有利」と判断したが、実際は当てが外れた、と言う場合でも2年間は元に戻れないと言うこと。
登録後二年間の事業見込みと併せて判断する必要があります。
※この他にも改正消費税法には経過措置が数々あるので、早呑み込みは危険です。出来るだけ理解されてから判断することを強くお勧めします。
インボイス方式を理解するためには元々の消費税の基礎も知っておく必要があります。
事業者なら誰でも御存知かとは思いますが、消費税の基礎的項目について書いてみましょう。
消費税の基礎知識
消費税の納税義務
消費税は通常、一年に一度申告納税を行い、その年分の消費税について申告すべきかどうかの判定は、二年度前(基準年度)の消費税課税売上高によって行われ、基準年度に年間1000万円超の消費税課税売上の有った事業者は、消費税の申告納税義務を負います。
※例えば、個人事業者の場合は令和2年の課税売上高によって令和4年の申告義務を判定します。
免税事業者と課税事業者
基準年度の消費税課税売上高が1000万円以下の事業者は免税事業者(消費税の申告納税の義務を免除された事業者)となることが出来ます。
また、逆に免税事業者は消費税が還付となる申告書を提出することも出来ません。そのため、多額の設備投資等で還付等が予想されるときは、あらかじめ「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者として還付申告を行ったりすることもあります。課税事業者は2年連続して選択し続けなければならないため、二年分の計画を元に還付を受けた方が得か損かを検討する必要があります。
※税理士に申告だけを依頼している場合、将来予測を元にした有利不利の検討は原則として行われず、知らない間に損をしている場合もよく見られます。「税理士は全て解っている(任せている)」と言う認識は間違っている、かも。
消費税の計算方法
本則課税方式
売上と共に預かった消費税の金額から、仕入と共に支払った消費税の金額を差し引いて計算した差額を納付する方法を言います。預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納税するため損得は基本的に生じません。
簡易課税方式
簡易課税は基準年度の課税売上高が5000万円以下の事業者だけが選択出来る計算方式です。納める税額は、売上を業種ごとに区分集計し、予め定められた控除税率を各区分の売上に乗じたものを仕入税額とみなして簡便に計算されますから、納付する金額は本則課税と違い、実際の金額と納付額とに差が生じます。これにより益税が生じたり逆に実際より納め過ぎたりします。
この方式のメリットは計算が簡単なことと条件が合えば益税を期待出来る、と言うことでしょう。逆に、事業内容によっては消費税を本来より多く払う、または還付が受けられない、と言ったことも有り得るため、有利不利は出来るだけ毎年行うべきでしょう。
また、簡易課税制度は課税事業者の選択と同様、課税期間開始の前までに選択し、選択したら2年間は継続適用する必要がありますので、選択する場合は以後2年間の経営についての見込みや計画を考慮しながら検討する必要があります。
※簡易課税制度周辺は、税理士業務の訴訟や損害賠償事例が非常に多い項目です。年一回申告だけを税理士に依頼している場合の多くは決算期後に書類等を税理士に渡すことと思います。ということは翌期から選択したい届出は物理的に期間内には間に合わない状況と言えます。
大事なことなので、少々詳しく書きましょう。
消費税の申告方式の選択
正しい手続きには、
毎年翌課税期間の開始前に、
納税者が翌期以降2年間の事業の予測を行い、
それを元に税理士が適正な判断と助言をし、
納税者がそれに応えて申告方式を選定し、
税理士が納税者から依頼を受け翌期開始前までに代理届出、
と言う連携が必要。選択しようとする課税期間の開始の前日までに上記の①~⑤が終了していないとアウト!
税理士だけでは何も出来ません。
ちなみに、当事務所では決算期の数ヶ月前から次期以降の動向や事情などを伺い、次期以降二年分の納税シミュレーションのうえ書面により双方が確認を行うこととしています。
納税者自身で申告されたり、他で年一決算で依頼されていた申告書には、検討した形跡のないものも多い。後で言っても取り戻せないので無駄払いしていても当事者に言わないことが殆どですが、きちんと依頼した場合の税理士報酬の方が安かっただろうという事案も多いんです。
今後も免税事業者なら年一で領収書から決算を組み立てるのは税理士にとっては単なる手間仕事で大した責任もありませんが、登録事業者となると手間も責任も桁違い。今後どうなるか、税理士業界の動向も気になります。
免税事業者とは?
その年分の消費税について申告すべきかどうかの判定は、二年度前(基準年度)の消費税課税売上高によって行われ、基準年度に年間1000万円超の消費税課税売上の有った事業者は、消費税の申告納税義務を負います。
なので、消費税の申告納税義務を負わない事業者を「免税事業者」と言います。
免税事業者からの仕入に係る経過措置
次に、免税事業者自身の問題では無く、免税事業者に対して支払をする立場から考えて参りましょう。
ここは非常に重要な部分です。
前項までに「インボイスが無ければ仕入税額控除は受けられない」と「免税事業者はインボイス発行事業者になれない」と言う説明を読んで、「登録しないと仕事が無くなる!」と思った免税事業者の方は多いでしょう。
しかし、ここにも経過措置が設けられているので様々検討が必要です。
〈経過措置の内容〉
原則
適格請求書等が交付されない課税仕入れは控除から除外される
経過措置
下記期間については下記の通りの割合で仕入控除を受けることができる
令和5年10月~8年9月 80%
令和8年10月~11年9月 50%
※これによって、令和11年までは免税事業者からの領収書も部分的に税額控除の対象になる、と言うことになりました。
ということで、下記のようなケースを考えてみました。
(なお、金額等は概算とお考えください)
課税事業者である取引先が部分的な場合
課税売上が税込800万円(うち事業者相手の売上が300万円、あとは非事業者)の場合
令和5年10月~8年9月
課税事業者かつ簡易課税(仕入率50%)と仮定した場合、消費税は、
800万円×10/110×(100-50)%=363,600円の納付。
しかし取引先にとっては支払った仕入消費税の80%が控除されるので、取引先における影響額は合計で
300万円×10/110×(100-80)%=54,500円。
自分が363,600円の消費税を支払うより、取引先に値引き交渉されて売上を54,500円値引きした方が30万円も得(3年間で90万円の違い!)と言うことになります。
勿論、必ず値引き交渉を受けるかどうかも判りません。
令和8年10月~11年9月
上記同様に取引先における影響額を計算してみると、
300万円×10/110×(100-50)%=136,300円。
ここでも自分が363,600円の消費税を支払うより、136,300円の値引きをする方が22万円も得(3年で68万円、前項と併せて6年間で約160万円!)、と言うことになります。
令和11年10月~
上記同様に取引先における影響額を計算してみると、
300万円×10/110×(100-0)%=272,700円。
これも免税のままの方が得ですねw
上記のケースでは「課税事業者の顧客がいた場合でも免税のままの方が得だった」と言うことになりました。
もちろん、簡易課税を採らない場合、業種区分が違う場合、その他個々の条件が違うと結果も違ってきますので一概に考えることは危険です。ただ、「控除出来ない消費税分以上値引け!」等と言われる様なことが無いよう、理論的に金額の交渉を行う必要は高くなるでしょうね。
【御注意ください】
個別の税務上判定や相談を税理士以外が行うと、それが無償であっても税理士法違反(ニセ税理士行為)となります。またSNS上などや家族や友人に対する類似行為も同様です。最近は掲示板等での遣り取りで罰を受けるケースもありますので充分注意してください。
この頁は当事務所のFACEBOOKで投稿された消費税の改正に関することをまとめたページです。 藤戸綜合事務所のFACEBOOKはコチラ
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