R7年4月~8月FACEBOOK投稿より

医療法人とは 

持分の定めのない社団医療法人(持分なし法人)

  前述の通り平成19年4月以降に新規設立された社団医療法人は全てこのタイプであり、出資持分に関する記載が定款に無い医療法人です。

 〈基金拠出型法人〉

 持分なし医療法人のうち、基金制度を採用した法人を「基金拠出型法人」と呼びます。

 基金とは医療法人に拠出された財産等について、一定の要件を満たした場合に医療法人から拠出者に返還されるものをいいます。返還する際には拠出した時の額面金額だけが返還され、金利などは付されません。

 拠出される財産等について、基金として受け入れるか否かは設立時の定款に定められますが、現在新設される医療法人のほとんどは基金拠出型医療法人となっています。

 上記で言う、基金を返還する要件は「医療法人が基金を返還しても運営に支障を来さない財務の状況であると認められること」、言い換えると、もし基金を返還したとしても、その後も設立時の基金を超える利益剰余が残っている状況であれば返還が可能です。

〈持分なし法人の社員〉

 「持分なし」という言葉の通り、このタイプの法人の社員には「自分は幾ら出資したから法人のこれだけを所有している」と言うような財産上の権利がありません。

 ただし社員で構成される社員総会は、法人の運営について理事や監事を任命するなどの重要な決議を行うこととなっているなど、社員各人は法人組織内において多大な権限を有していることは持分あり法人と同様です。

〈持分なし法人には相続税が掛からない〉

 「持分が無い」と言う事は、「財産権を持たない」と言い換えた方がわかりやすいでしょう。財産権が無ければ相続税も掛からない、これは持分なし法人の最大の設立メリットと言えるでしょう。

 医師の御家庭では、クリニック等所在の土地建物、医療機器、自動車、理事や職員等の社宅、その他医療に関係する財産が総財産のうち相当の割合を占めるものですが、それらのうち医療法人が所有している財産については全て相続税の対象外、これは本当に大きいですね。

 持ち分あり法人が一般の法人と同様の評価で相続税対象になることと対照的であり、儲かっているお医者さんほど持分なしの方が有利と言えるでしょう。

〈乗っ取りなどに脆弱である場合も〉

 持分の有無にかかわらず、医療法人は営利法人では無い事から社員になる際にも出資(または基金拠出)を行う必要はありません。ただ、持分あり法人の場合は法人の純資産額などの話題や相続対策の話題が出る事が多く、持分なし法人の場合にはそれらを気にする必要が無いため、安易に社員を増やす事が多いようです。

 財産権は無くても医療法人に関する権限は社員総会に集中していますので、以前に書いたとおり、他者の社員就任には慎重さが求められます。

持分なし法人は解散時に国に財産を取られてしまう説

 平成19年の第5次医療法改正を前に医療業界を騒がせた問題です。というか、医師周辺の人間たちが騒ぎ立てた、と言った方が正しいかもしれません。

 医療法改正の概要が発表された頃の話。それまで設立が認められていた持分の定めのある医療法人であれば、社員がやめるときや法人が解散する際には社員の持分に応じた財産が分配されます(一部例外あり※)。ところが、改正後に認められる医療法人の形態は持分の定めのない医療法人だけ。この持分なし法人では、社員がやめるときにもお金は返金されない、解散する際にも余った財産は国や医師会などに渡すことが定められている、そういう話題で結構な騒ぎになりました。

 この頃、医療系雑誌や各種セミナー等では「医療法人成りを考えているドクターは改正前に設立しないと大変だ!」的な論調が大勢を占め、現に平成18年19年は持分あり法人の駆け込み設立が非常に多く見られました。医療法人設立が得意な税理士、法人成りさせて損金性保険を売ろうとする生保、クライアントを増やしたいコンサルタント、そういった人達が騒ぎを助長したのでした。

 この騒ぎの主要因は、医師会等に情報を吹き込んで医療法人成りを引き受けたり生命保険等の金融商品を売りつけよう、という営業目的、またコンサル担当業界の話題作り目的、言うならば医療周辺業界の「恐怖ビジネス」で、どこを見てもネガティブな論調ばかり。この時期、それらを見かねた私はちょっとした使命感から各種のセミナーや雑誌コラムなどを積極的に引き受け、新しい制度について説明して回りました。

 医療系雑誌などでは最初「もう少し危機感を前面に出して読者であるドクターの目を引くように」などと編集からダメ出しを受け「しかし!こんな風な回避策があるから安心」の論調を付け加えてOKを頂いたり、という憶えがあります。

 その頃私が彼方此方で話した内容は次のようなものです。

***

 確かに解散時の余剰財産を社員で分配する事は出来ません。余剰財産が有る場合には国や地方公共団体また医師会等に渡す事が定められてもいます。でも、余剰を作らずに解散すれば財産を「召し上げられる」事は無くなります。これを回避するには、法人が解散した際には各役員(社員では無く理事や監事のこと)が余剰財産を全部退職金で取ってしまえば済む事です。

 法人税法を勉強した経験のある方の中には、「役員の過大な退職給与はダメなんじゃないか?」という疑問を持つ方も多いことでしょう。たしかに役員に対する過大退職給与は損金不算入とする、と条文には記載されています。しかし、法人税法で定めているのは「損金不算入」つまり経費にしちゃいけませんよと言う事だけであって、「過大分は支給しちゃダメ」と定めている訳では無ありません。

 また解散から清算までの法人税申告については、全ての残余財産を役員退職金として分配し、その結果損金算入限度額範囲内の役員退職金だけで法人の課税される期間損益が出なければ法人税法上の問題はありません。また、過大退職金部分を損金不算入計算した結果法人の課税所得が出ないように操作する事も限定的ではあるが可能です。例の有名な判例に掲げられた損金不算入限度額は、最終事業年度月数や最終役員給与額等を調整する事によって合法的計画的に一定範囲内で操作出来、その結果最終事業年度を実質的に赤字にする事も簡単です。

 ちなみに、持分あり法人解散による出資金を超えた部分の分配は「みなし配当所得」、役員退職金は「退職所得」で両方とも分離所得で税率は二割程度。出資金返還部分は税金対象外だが、退職所得にも大きな控除が有り、役員への課税は何方が有利かどっちもどっち、何にも怖がる必要は有りません。

 解散するときの課税を避ける方法さえ判っていれば相続税が掛からないメリットが生きて来ます。怖がる必要なんて無い、お子さん方が相続税で苦しむより新しい法人のタイプを設立した方が全然良いと私は考えています。

***

 こんな話を様々なところで行った結果、生損保会社や製薬会社また地域の医師会等では、配布物から不安感を煽るような記述を削り、替わりに様々な対応策を記載される所も出てきました。代わりに私はコンサル系の方からすっかり嫌われたような気もしますが、まぁ良いか(笑) 

経営上の注意点
持分あるなしは経営上どう違うのか?

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