財産権の違いがもたらす「持分あり法人」と「持分なし法人」ですが、経営上のノウハウも随分と違ってきます。
〈後継者への引き継ぎ等についての違い〉
持分あり法人の場合は、出資の割合に応じて各社員に財産権が付されています。なので、法人が毎年利益を出すと持ち主である社員の財産が膨れ上がると言う事になります。
資本金1000万円の持分あり法人のオーナーである院長先生が、法人成りしてから毎年1000万円の法人利益を出し続けたとしましょう。その間の平均税率が30%とすると法人価値は当初の1000万円に1000万円×70%の20年年分を足して1.5億円(相続税や贈与税評価を70%とすると1億500万円)と言う事になります。この時点で次世代に事業を承継しようとした場合、また相続が発生した場合など、相当な税金支払う事になってしまいますから、それを避ける為には長期間に渡って次世代への持分贈与を続けるなど出来るだけ一気に課税される事を避ける必要が出てきます。
対して持分なしの法人では同様に1000万円の利益を20年続けて法人価値が1.5億円になったとしても相続税評価はゼロ。課税に関する準備や相続対策は不用です。
〈事業年度利益の配分についての違い〉
持分あり法人では、上記のように法人価値が上がり過ぎてしまうことを防ぐことも経営上重要になってきます。そのため、役員給与は高目に設定され、院長先生から借りている診療所の土地や建物の賃料は高く、損金性の高い生命保険や償却期間の短い節税商品(と称する商材)を取り入れるなど、兎に角法人に利益が残らないように経営されることが多いのです。そういう事もあって持分あり法人では医療法人と個人の税率差(医療法人なら最高35%程度、個人は55%程度)を上手に利用して節税することが持分なし法人よりもやや難しいと言えるでしょう。
例えば、持分あり法人の理事長等の給与は相続対策を兼ねて法人に利益を残さないために概して高目に決めがちですが、持分なし法人の理事長等は相続対策を考える必要が無いことから最も所得課税を軽減出来る金額や、個人としての必要最低限で決めたりするため概して低目で決めることが多いようです。
持分があっても無くても殆どの小型医療法人は実質的に院長のものですから、節税方法については法人と個人を全て併せ大局で考えることが可能です。しかし持分の有無によって対策の内容が違うため、前述のように経営方針が全く違ってしまうことも多いのです。
〈課税されない給与の利用〉
持分なし法人の役員給与は低目のことが多いことは前に書いたとおりです。世界的に見てビジネスはボーダレスになっており、各国の法人は世界を舞台に活躍しています。そういった中で自国だけが法人課税を強めると世界との競合に勝てないため、どの国でも法人課税は低く抑え、個人に対する課税は強化する方向になってきている、それが最近の世界的なトレンドです。
それと共に世界的に取り入れられているのがフリンジベネフィットでしょう。これは給与以外の給付やサービスのことで、特に医療法人においては、生命保険や損害保険の加入、社食や給食等による食事の提供、保養所の充実、社宅の提供、社用車の貸与などのうち役員に対する非課税のフリンジベネフィット供与は有効な節税方法と言えるでしょう。
所得課税が非課税となる現物供与は法人持分の有無にかかわらず有効な節税方法ですが、持分の定めのある法人の方は役員給与が高額なことが多く手取り分を確保する必要性が薄いことや、経営者の年代が高目であることから、どちらかというと持分なし法人で盛んに工夫されている印象です。
医療法人に限らず、役員に対しても一般職員に対しても所得税等が課されない福利厚生項目は数多く、有効に利用することでグループ全体の支出を抑えながら実質所得を上げることが可能になります。
※職員に対してフリンジベネフィットを採用した場合、実質的な手取り等は増えていても額面給与が上がらないことなどから有利さを理解して貰えず逆に不興を買う場合も有るようなので要注意。経営陣がきちんと内容や効果を理解した上で、職員の皆さんと相当丁寧に話し合い理解を得た上で導入する必要が有るかと思います。

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