社団医療法人には持分の有無によって二種類に区分されます。
ちなみに財団医療法人は、各人が寄付行為により財産権を放棄した財産自体に法人格を付与されたものであるため持分の概念そのものがありません。
〈持分あり法人とは〉
法人の定款において、出資持分に関する定めを設けているものを指します。この出資持ち分とは設立時に社員から拠出された財産で、それが医療法人の資本金を構成し、その資本金のうち各人が拠出した割合に準ずる持分に応じて医療法人が共同所有されます。
〈出資について〉
医療法人が運営されるためには運営するための資金や医療設備等が必要です。なので、医療法人制度の考え方としてはその元手として広く出資を募り法人が設立される、ということになります。ただ、実際のところ小規模医療法人の場合には必要最低限の社員3人だけ揃えて設立される場合が殆どですね。
出資は社員が行うものですが、社員が絶対に出資しなければならないと言うことは無く、小型の医療法人では院長が大半の出資を行い、その他の社員の出資額は極少かゼロ、と言うような法人が多いようです。
〈出資の種類〉
この出資については金銭だけで無く医業未収金等の売上債券や医療用機材また医薬品などの現物出資も認められます。また、出資される固定資産等と対応する部分の借入金もマイナスの出資として法人に引き継がせる事が可能です。
ちなみに、既出のとおり社員は自然人に限られますが、出資は法人が行っても良いこととなっています(配当が禁止されており、社員では無いことで出資金額に応じた決議権も持てないため小型医療法人への法人による出資は殆ど例がありません)。
〈医療法人社員の有する財産権〉
持分あり法人の場合は法人が解散するときや、社員が辞任すると共に出資金の返還請求をした場合には、持分に応じた財産の配分が行われます。これは各出資社員には出資額に応じた財産権が付与されていると言い換える事も出来ます。つまり当初1000万円で設立した医療法人が利益を出して1億円の価値を持つに至った場合には、各社員の出資持ち分の価値は10倍になっていると、そういう事で、株式会社などと同じですね。
ただし、医療法人の社員が持分をお金に換えるのは大変です。出資配当は禁じられているため持分に対応するお金を受け取ろうとすると、持分を他の社員に売るか、自分が社員を辞任して医療法人から持分に応じた財産の返還を受けるか、または法人を解散して残余財産の配分を得るか、程度しか方法しか有りません。
※ 出資金の一部返金は受けられないので、社員は辞任しなければ法人からの出資金返還は受けられません。
〈現在は設立が認められていない「持分あり」〉
持分あり法人は、平成19年(2007年)の法改正(第5次医療法改正)において新規設立が出来なくなりました。その理由は「営利性の排除」で、例えば医療法人が設立後一定の期間を経て10倍の価値に達したときには、当初出資した社員は出資額の10倍の財産権を持つ。そして社員を辞めるときには資金を引き出す事も可能、それは株式会社の配当などと同様だと言う考え方からです。
〈制度改革の裏側〉
医療法人の設立認可権は非常に大きな利権なので厚生労働省としては絶対に手離したくない。しかし財務省周辺から「それじゃぁ営利法人と同じじゃないか」「株式会社等に一定の縛りを入れて医療機関設置許可を出しても良いのでは?」などと責め立てられ省庁間の折衝が何年も続いていた、と。そこで「じゃぁ今後は持分の定めのある社団医療法人の設立は認めないことにするから、その代わり医療法人認可権は認めてよ」みたいな遣り取りが想像されます。
〈経過措置型医療法人〉
平成19年の医療法改正時点で存在する出資持分のある医療法人については、当分の間存続していくことが認められ、それら法人は「経過措置型医療法人」と呼ばれ、現在でも医療法人の3分の2が「持分有り」で多数派となっています。
ここからは当時の状況から私が推理した部分も含まれます。
平成19年の医療法改正当時の厚生労働省としては、医療法人の非営利性を確たるものにするため、そのうち全ての医療法人を持分なしに変更させようという思惑だったように思われます。しかし持分ありを強引に持分なしに移行させる様な行政は出資社員の財産権の侵害、つまり憲法違反になってしまうため出来ません。なので自主的に定款変更して貰って事を丸く収めようと「持分あり」から「持分なし」への定款変更を広く募る事にしました。
この頃まで厚生労働省は旧来の医療法人には早く定款変更して貰って全ての法人を持分なしに変えてしまおうという気満々で「持分の定めのない社団医療法人への定款変更についてのお知らせ」なども各医療法人に配布されたりしました。「そのうち何とかなる」と高を括っていたようにも思えます。
厚生労働省としては、財務省を初めとする各筋から「今の医療法人は営利法人に近い」とか「今後は一般社団法人制度が拡充される事もあり、特殊法人である医療法人制度の必要性は薄くなるんじゃ?」などと迫られ、「認可は持分なしに限る」とした訳で、これにつれて全ての医療法人も同時に「持分なし」に変更させようとした訳です。そうしたら厚生労働省の利権は守られますからね。
と!ここで各省庁から茶々が入る。この様子を会話形式で書いてみましょう、勿論全て私の作文です。
厚生労働省「今後医療法人は全部持分なしにさせるよ」
国税庁「持分なし?出資社員が財産権を放棄するとか?」
厚生労働省「そうそう、これで営利法人じゃなくなるw」
国税庁「で、社員が放棄した財産は誰のものになる?」
厚生労働省「そりゃ医療法人でしょ」
国税庁「医療法人から社員に出資割合分を払い戻したりするってことすか?」
財務省「そいじゃ営利法人でしょうが」
厚生労働省「じゃ払戻はナシで放棄一本で行きましょうか」
国税庁「だったら貰った医療法人の方が税金払わないとダメじゃね?」
厚生労働省「どゆこと?」
国税庁「何か貰ったら税金払うの常識でしょ」
厚生労働省「なるほど」(まじか!こりゃ大変だ!!!!)
厚生労働省「この文面、全国の医療法人に即広めてね!」
医師会歯科医師会「OK!『定款変更は税理士等に相談した上で慎重に』ですね」
厚生労働省「医療法人の定款変更認可は慎重にな!(受け付けるなよ)」
都道府県「了解!認可申請来たら窓口で行政指導入れます」
と言う事で、当時の事を記憶されている医療法人関係者の方々も多いと思いますが、各医師会や歯科医師会から「定款変更は慎重に!」というFAXが各医療法人宛に一斉に送られ、その結果持分なしに定款変更した医療法人は殆ど居なかった、と言う事件がありました。しかし、その内情を直ぐに理解した方はごく少なかったと思います。従前の殆どの医療法人に法人税課税されていたら医療業界が大パニックに陥っていたでしょうね。
もし税理士が持分なしへの定款変更認可申請にゴーサイン出したとしても、行政窓口で不受理扱いされていたとは思いますが、我々の及び知らないところで勝手に税理士に判断責任押しつけられる機会が多いのは困りものです(笑)

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